労働者社会主義同盟綱領
  

 わたしたち労働者社会主義同盟は、創立大会における「私たちのよびかけ―日本労働者党と建党同盟の統合にあたって」(1998年2月)において次のように規定した。「この両者の組織の統合は、めざすべき共産主義者の統一と革命党建設への新たな出発、あるいはその一つの結節点である。社会主義に未来があるとすれば、ここにいう『私たち』はより多くの『私たち』に転化する可能性、いや必然性をもつだろう。またそれぞれの出自と歴史的経過、組織の大小や活動の後先などさまざまな違いを越え、小異を残して大同につく精神で誠実に努力されるべき統一の事業の強化は、お互いの願いであるとともに、時代の要請である。私たちは今回の両者の組織的統一を通じて、社会を変革する共産主義者の強大な党をつくるためいっそう奮闘するものであることを表明するとともに、この決断がさらに多くの、こころざしを同じくする全国各地の共産主義者の協同と統一の事業の発展に役立つことをこころから期待する」と宣言し、「この立場にたって私たちの綱領を提起する。これは上に述べた観点から、当然にも完結したものではないし、闘う仲間と一線を分かつための独善的なものではない。それは現状では多くの未解決の論点、深化させるべき問題点を残しているのであって、今後の私たちの組織の建設・強化、闘いの実践と一体になって、また社会主義の革命を志向している信頼できる多くの共産主義者の批判と協力にも助けられながら、たえず見直され発展させられるべきものだということを前提にしている 」。
 わたしたちは、この間その精神にたち、同盟は闘いぬいてきた。そしていま、世界は本格的な激動期に入り、階級、社会、民族、国家などさまざまな局面において、対立が激化し、各地で紛争・局地戦争も生起している。さらには、テロと対テロ戦争という形で、人命が奪われている。この情勢は資本主義体制を変える新しい社会主義革命の主体勢力の形成と影響力の拡大を切実に求めている。

一、私たちの時代


 ソ連の崩壊により東西冷戦体制は幕を閉じた。二〇世紀の全期間を通じ、国際共産主義運動はロシア革命を皮切りにして帝国主義・反動支配勢力と闘い、人類の解放をめざした闘いを続けてきた。この過程には正反の多様で貴重な経験があり、勝利と敗北、栄光と挫折の経験があった。とりわけソ連・東欧の崩壊は、実現されるべき社会主義社会の内実の問題を含む二〇世紀の国際共産主義運動の全面的な再検討を迫ることになった。
 だが、私たちは、資本主義は「勝利」し、「社会主義はもはや博物館行きのものになった」とか、「イデオロギーの時代は終わった」といった観点を容認しない。
 現代帝国主義の世界体制は、全世界的規模における一握りの富める国と貧しい国との分裂であり、現代帝国主義はこれらの圧倒的多数を占める貧しい国に寄生し、そこから暴利をむさぼることを通じてしか、その体制を一日も維持できない。
 資本のシステムは止まることを知らない膨脹の下でこれまでの国境の枠をさえ越えて、「社会主義」革命をなし遂げたとしてきた国々をも含んだ世界の隅々にまで浸透している。 一方、圧倒的多数の発展途上諸国は政治的独立を次々に達成したものの、経済的には隷属を強いられ、南北の格差は拡大している。新興工業国も帝国主義と結びついた開発独裁のもとに置かれている。
 多国籍企業化の進展により経済のグローバリズム、ボーダーレス化が著しく進み、帝国主義国相互間においても経済的な相互依存性は飛躍的に進展した。このことは、現代帝国主義の支配体制が、かつてのような植民地・従属国の地理的・領土的分割支配から、政治的には独立を承認しつつ、経済的支配をめざす形態に転換したことを示している。これにより、帝国主義間矛盾の貫徹形態は大きく変容し、かつてのような世界再分割を求めた帝国主義間戦争の可能性は後景化し、いまや帝国主義の権益と「世界秩序」を維持するための努力は、世界的規模での相互浸透と、それにつながった南の世界に対する共同の軍事力の展開へと重心を移してきている。現代帝国主義はまた、 南の諸国から原料・資源を買いたたき、超過利潤となる搾取を強める一方で、大量生産・大量消費システムによる「豊かさ」を謳歌しているようにみえる。しかし、採算と効率と競争の社会は労働者・人民に非人間的な状態を強制し、地球的規模で自然破壊と資源の浪費などのさまざまなひずみを生み出し、新「自由主義」の名の下で新しい貧困を生み出しながら、人類生存の危機を高めている。まさに一国的・地球的規模で非人間的状態が先鋭化し、資本主義に、こうした矛盾を解決する能力がないことは明らかになりつつある。資本主義の「勝利」は人類と地球環境の破壊と密接につながっている。

 資本主義世界体制の心臓部にまでも激動の波が及んできた。しかし、資本主義の支配体制が動揺し危機に陥るほどに、支配階級は、ますます凶暴化し、強権的な弾圧体制の構築と排外主義・ナショナリズム、戦争への策動で、事態に対処しようとしてくる。いまこそ民衆の怒りと運動を政治的に表現し、国家権力を変え、民衆による民衆のための政治が実現されなければならない。

 二、日本社会の特徴と革命の任務

 明治以降の近代日本のたどった道は、侵略戦争と対外膨脹、人民抑圧の歴史であった。明治維新により誕生したばかりの天皇制日本国家は、アイヌ民族を平定し、琉球処分により沖縄を日本の版図に組み込んだ。さらに朝鮮・台湾への出兵を繰り返し、日清・日露戦争を通じて台湾・朝鮮の植民地支配へと突き進んだ。そして、朝鮮を大陸への橋頭堡として中国に対する侵略戦争を拡大していった。アジア諸国を併呑しようとする日本帝国主義の果てしない野望は、ついには「大東亜共栄圏確立」を呼号し、アジア太平洋戦争へと突き進んだ。
 この日本帝国主義の侵略戦争・植民地支配は、アジアの人々に甚大な被害を与えた。長期にわたる侵略戦争・植民地支配の中で、日本帝国主義を疲弊させた最大の力は、この中国・朝鮮をはじめとするアジア民衆の抗日戦争であった。そしてアメリカ帝国主義をはじめとする列強との帝国主義間戦争の要素も加わり、一九四五年、ついに日本帝国主義は敗北した。日本の民衆もまた、侵略戦争に加担し加害者となった挙げ句、自らも重大な被害を被った。この悲惨な経験は、侵略戦争と植民地支配を反省し、世界の諸国民とともに日本は平和国家の道をあゆむことを決意させ、それらを基礎に主権在民、平和主義、基本的人権の尊重を明記した日本国憲法を誕生させた。
 敗戦によって日本はアメリカ帝国主義の占領下に置かれた。沖縄は1972年まで占領が続けられた。
 日本の支配層は、アメリカ帝国主義の強いイニシアティブと援助のもと、国家独占資本主義体制を構築し、帝国主義国として復活させた。日米安保条約によってわが国には数多くの米軍基地が存在し、特に沖縄に集中させてきた。日本はアメリカ帝国主義の核戦略を軸とする世界戦略に組み込まれ、その一翼を積極的に担ってきた。
 独占資本家階級は、日本を戦争とファシズムの道に突き進ませアジアと日本人民に言語に絶する苦しみを与えた天皇制を温存し、再び人民統合と支配の重要な道具として再編・強化している。かれらは議会制民主主義を当面の主要な統治形態としつつ、ブルジョア議会制政治を翼賛的な政治装置に変え、自衛隊・警察などの暴力装置と官僚機構を飛躍的に強化している。こうして現憲法が掲げた民主主義と平和主義の理念とそれに依拠した政治は次第に空洞化している。小選挙区制は、独占資本家階級の政治支配をより強化し、わずか十数%の有効投票で政権党を誕生させることで、労働者・人民の政治的発言を圧殺するシステムだ。
 日本帝国主義の主要な政治的代理人は自民党である。自民党は、長期にわたる支配を続け、格差の拡大と貧困化をもたらした。その弊害への怒りは2009年の政権交代となったが、民主党政権のアメリカと財界への屈服による変質と失政の連続によって、2012年末の総選挙で、自民党は政権をとりもどした。集団的自衛権の行使容認と戦争法制による日米軍事同盟の強化は、憲法の民主主義と平和の原則を打ち壊すものであり、日本と世界の人びとに深刻な災いをもたらすものである。
 資本は、労働者階級に過酷な長時間・過密・過重・有害労働と非人間的な競争を強い、ますます労働基本権を侵害することとあいまって、飽くことなき利潤の増大を追求している。農民をはじめとする勤労人民を搾取・収奪して莫大な利潤を懐に入れて肥え太り続けている。
 2011年3月11日の巨大地震・津波、福島第一原発の大事故はすさまじい被害をもたらした。しかし政府・資本は、深刻な原発事故と放射能被害の収束も出来ないまま、経済的理由により原発の再稼働・増設へと復帰し、核兵器保有に繋がる「核燃料サイクル」をあくまで推し進めている。
 広範な人民の基本的人権と民主的権利は侵害され、部落差別、民族差別、女性差別などが温存されている。
 独占資本家階級は、猛烈に商品・資本輸出をおこない、ODAを利用した南の世界に対する搾取・収奪を拡大して、南の諸国の経済的隷属、貧困と地球破壊などの重大な事態をひき起こしている。同時に、多国籍企業の展開により、「先進資本主義国」と呼ばれる諸国においても、労働者・人民の搾取を強化している。
 日本革命のもっとも基本的な任務は、日本独占資本家階級の支配を打倒し、日米安保条約破棄、米軍基地撤去など、アメリカ帝国主義による日本の国家主権侵害を排除して、人民の民主的権力を樹立し、社会主義革命をなし遂げることである。
 私たちは、労働者階級を主力とし、農漁民・都市自営業者・進歩的知識人などとの同盟を基礎とする最も広範な統一戦線を結成して、革命の主体を形成し、ブルジョア階級独裁の根幹である暴力装置と官僚機構を麻痺させ、解体し、外国帝国主義の不当な干渉を排除しつつ、人民権力を樹立するために闘う。そのための条件は、革命の民衆的基盤を広範かつ強固に形成することによって、支配層の抵抗を封じ込めることであり、労働組合をはじめとするさまざまな大衆的な組織を職場、地域に強固に作り上げ、大衆運動を高揚させ、議会選挙において安定的な支持を獲得しなければならない。
 この長期闘争の過程においては、私たちは議会闘争を含む多様な闘争形態を駆使し、また他の進歩的な運動および政党・組織・個人と誠実に団結し、新しい民衆的政治勢力と広範な憲法改悪阻止の共同戦線を形成し、その先頭に立って闘い、主権在民、平和主義、基本的人権の尊重など日本国憲法三原則の完全な実施・徹底させる政権を打ち立てる。この政府のもとで民主主義の徹底、人民の生活の向上、対米自立、近隣アジア諸国をはじめ世界民衆との友好の政策を実現する。
 日本革命は、プロレタリア世界革命の一構成部分である。私たちはプロレタリア国際主義を堅持し、全世界のプロレタリア階級と被抑圧人民・被抑圧民族と団結して、帝国主義・植民地主義・覇権主義に反対し、これらの圧迫と収奪から全人類の解放をめざして闘う。

  三、私たちのめざす社会主義 

 旧「社会主義諸国」に生じた諸事態は、社会主義のイメージを著しく傷づけた。そこには様々な問題が提起されている。しかしながら、資本主義社会から社会主義社会へという人類史発展の展望はいささかも揺るがない。
 私たちのめざす社会主義は、スターリン時代に形成された官僚主義的政治・経済システムとは本質的に異なり、民主主義を基礎に、分権と自治、社会的合意を原則とする長期にわたる過程で形成されるものとして構想される。私たちは、民主的な政治体系を確立し、人間の解放をめざして、搾取や抑圧のない労働者・勤労人民が真に主人公になる社会をめざす。
 私たちは、革命に勝利し人民権力を樹立した後、独占資本家階級の生産手段と金融機関を全人民的所有に移し、常備軍を解体し、さらに警察機構の民主的再編を行う。また、天皇制を廃絶し、官僚機構を解体して人民の政治・権力機構に変え、人民の日常生活と安全を守るための機構を充実する。この革命の勝利によって、日本における社会主義への新しい道が切り開かれる。この過渡期の国家は旧社会の国家とは本質的に異なる国家、すなわち死滅に向かう国家=半国家である。
 人民権力の樹立後、社会主義を実現していく過程において・・・・
 政治の分野では、地方分権と地方自治・住民自治、各級政府・権力機関の活動の情報公開と人民による点検がシステム化される。そして競争社会を連帯社会に代え、一人ひとりの人権が大切にされ、労働者・農民をはじめとする人民のさらに高度の民主主義が徹底的に遂行される。
 すべての権力は、民主的な普通選挙によって選ばれた労働者・農漁民をはじめとする人民代表が構成する機関が代表する。人民の意志の表現としての選挙の結果は尊重される。人民は政党を結成し、選挙をはじめ政治活動を自由に行う権利をもつ。高級官僚の特権、すべての公務員の特権は廃止される。国家機関の活動は人民に公開され、点検される。また人民の生存権および言論・出版・結社・集会・ストライキ・デモンストレーション・思想・信教の自由などの基本的人権と民主的権利は完全に保障される。これらはすべて法に基づいて行われる。
 経済の分野では、生産手段の社会的所有を基本として、合理的な計画経済の策定と運営、とくに労働者権力の下での企業内での民主的運営を実行することによって、資本主義のもとでの搾取と生産の無政府性を克服する。生産力の発展の目的は、自然との調和のもとに人民生活の向上と人間的豊かさを最大限に実現するための条件をつくり出すことである。所有制の全面的改革は相当長期の展望のもとに追求され、それまでの間は生産手段の社会的所有を基本としつつも、生産力の発展段階に照応した多様な生産関係が共存する。非独占資本および農業、自営業の社会化・共同化は条件の成熟度に応じて、自発的意志を尊重して段階的に行われる。
 文化の分野では、自覚的に人民のための科学・文化水準を発展させて人間の全面的解放と発展をめざす。
 対外政策の分野では、世界平和を守り、平和五原則に基づいて世界各国との国家関係を発展させる。民族自決権を擁護し、諸民族の完全な平等に立った世界人民の大団結をめざす。世界の労働者階級、被抑圧人民、被抑圧民族の平和・民主・解放と生活向上をめざす闘争を断固支持する。
 労働者階級は、革命によって樹立される人民権力に依拠し、人民の大多数の意思にしたがい、その指導性を強化しつつ社会主義へと前進する。
 私たちの最終目的は世界に共産主義を実現し、全人類を解放することである。 

            
 (労働者社会主義同盟第6回大会・2016年4月